2020-08-30

「火をつけよう」

また煙が上がる。

最初はカラカラの草が燃えて、小さい枝に火が移る。

徐々に太い枝にも火が移り、火は座布団の上の落語家のような安定感を見せる。

そして網の上から垂れるお肉の油は火を煽るように、「ぽたり、ぽたり…」と重力に従ってゆっくりと下へ飛び込んで行く。

火は勢いを増し、漢字で見る「炎」のように高さを増していく。

徐々に空腹感を誘うジューシーな香りが、鼻を包み、待ちきれずにキンキンに冷えたアサヒビールを用意する。

その姿はまるでおやつを待つ小学生のようだ。

ようやく火の通った5mmのお肉は、太陽の光を反射し、はたまた光を吸収し、ピラミッドのように照り映えている。

そのお肉にしっかりタレを含ませて、米の上に乗せる。お肉を先に口に入れ、数秒の時差で米が口に入る。

“幸” 高級な車を欲しいと思うことも、これといって心の底から没入できる趣味も無い私にとって、かけがえのない時間。

それは、「太陽の下、お肉を焼く時間」だ。真っ青な青空を思いっきり吸い込んで、お肉をたっぷり食べる。家族と一緒に。愛犬と一緒に。そしてキンキンに冷えたビールを飲む。

なんだかんだ、みんなで火を囲んでしっぽりBBQしている時間が59年生きてきて1番幸せかもしれない。

「美味いね、美味いね〜」って言って、娘の高校生活の話を聞いたり、

これからのアーセンについて家族一緒に考えたり。

気づいたら火も小さくなり、空は茜色に。一通り腹を満たしたら、さっき焙煎したばかりの「コロンビア」の豆をドリップする。

「うん、美味い。」お肉の次は、コーヒーカップを手に持って小さくジリジリ燃える火を眺める。

風は雲を外側に追いやり、黒く幕開けた空に星の粒が顔を出す。

たまに上を見て、 たまに火を見て、たまに家族の顔を見て。

今日はそんな1日でした。

なにもない里で。

また火をつけよう。

 

 

”アーセンたよりvol.4” より

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